【感染症】新しいマラリア防除対策は抗マラリア薬を染み込ませた蚊帳
Nature
2019年2月28日
殺虫剤と抗マラリア薬で処理されたベッドネット(ベッド用の蚊帳)を用いることで、マラリアの伝播を阻止する活動を強化できることを明らかにした論文が、今週掲載される。この戦略は、殺虫剤耐性を示す蚊の個体群が生息する地域でのマラリア防除活動に役立つかもしれない。
マラリアの拡大を防止するための最も効果的な方法の1つが、殺虫剤を散布した蚊帳を使うことだが、ハマダラカ類が殺虫剤耐性を獲得するようになっており、マラリア拡大のリスクは高まる傾向にある。そのため、マラリアを管理するための新たな方法が緊急に必要となっている。
今回Flaminia Catterucciaたちの研究グループは、雌のガンビエハマダラカ(Anopheles gambiae)をアトバコン(既にヒトに用いられている抗マラリア薬)などのマラリア原虫阻害剤に曝露させると、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)の発生と伝播が阻止されることを実証した。この阻止作用は、低用量のアトバコンと最短で6分間(蚊が交尾相手を求めて蚊帳に止まっている時間にほぼ等しい)の曝露時間で達成された。アトバコンは、熱帯熱マラリア原虫の細胞中のミトコンドリアの正常な機能を阻害して、マラリア原虫を死滅させ、マラリアの伝播を防止するが、ガンビエハマダラカの生存と繁殖には影響はなかった。また、Catterucciaたちは、アトバコンと同じ標的に作用する他の薬剤でも同じ効果が見られたことを報告しており、このことから、蚊の体内にいる熱帯熱マラリア原虫の活動を停止させる上で、マラリア原虫のミトコンドリア機能が適切な標的であると示唆される。
Catterucciaたちは、今回の研究で観察された効果がマラリアの伝播動態に影響を与える経路をモデル化し、蚊帳に熱帯熱マラリア原虫の阻害剤を染み込ませる方法を用いることで、マラリア原虫の殺虫剤耐性が全世界に及ぼす健康影響を大きく軽減できる可能性があると予想している。
doi:10.1038/s41586-019-0973-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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