【生態学】協同育児と托卵を使い分けるカッコウが得る利益
Nature
2019年2月28日
熱帯に生息するカッコウの雌は、協同育児を行えないときに托卵することを、11年間の現地調査データから明らかにした論文が、今週掲載される。
協同営巣する鳥類は、社会的寄生者(宿主の巣に卵を産み付けるだけで孵卵や育児をしないもの)に対して無防備だ。熱帯に生息するカッコウの一種であるオニオオハシカッコウ(Crotophaga major)は、一風変わっており、協同育児を行う雌と托卵する雌が混在していて、その両方を行う雌もいる。ところが、雌のオニオオハシカッコウがこうした異なる繁殖戦略をいつ、どのような理由でとるかについては、実験的証拠がなかった。
今回Christina Riehlたちの研究グループは、オニオオハシカッコウの2つの代替的な繁殖戦略による適応度の利益を調べることを目的としてパナマで実施された11年間の現地調査の結果を報告している。この現地調査でRiehlたちは、個体群の雌の大部分が繁殖期当初は協同育児を行うが、少数の雌は、最初の巣が破壊されると、その後は托卵することを明らかにした。また、一度托卵した雌は、それを繰り返す傾向も見られた。Riehlたちは、長年にわたる調査の結果、いずれの繁殖戦略の適応度の利益もほぼ同じであることを実証した。一度も托卵したことがなく、一貫して協同育児を行ったオニオオハシカッコウは、協同育児と托卵の両方を行った個体と比べて産卵数が多く、自らの巣で育てたヒナの数も多かったため、生殖生産量の合計に差はなかった。
以上の知見は、オニオオハシカッコウの繁殖戦略に関する手掛かりとなっており、個体群において協同的繁殖と寄生的繁殖の戦術が使い分けられる仕組みを実証した。
doi:10.1038/s41586-019-0981-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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