エボラ大流行の生存者由来の抗体から新しいワクチンへの道筋
Nature Structural & Molecular Biology
2019年3月5日
エボラウイルス感染の生存者由来の抗体を詳しく調べた結果を報告する論文が、今週掲載される。今回の研究では、エボラウイルスの新たな脆弱性部位が見つかっており、これを治療法とワクチンの開発に利用できるかもしれない。
エボラウイルスは、重篤な出血熱を引き起こし、死亡率は90%に達することがある。ヒトで大流行するエボラウイルスは、エボラウイルス(EBOV)、ブンディブギョエボラウイルス(BDBV)、スーダンエボラウイルス(SUDV)の3種類だ。既知の抗体の大半は、1種類のエボラウイルスに対する防御しか得られず、2種類以上のエボラウイルスの感染を阻止できる広域中和抗体は、わずかな数だけ同定されている。ただし、こうした抗体のほとんどはウイルスの外層の1領域である糖タンパク質(GP)を標的としているが、GPは常に露出しているわけではないため、一部の抗体はGPの基部の露出領域を標的としている。
Erica Saphire、Kartik Chandranたちは今回、GPの基部を標的とする抗体の1つであるADI-15946を調べた。この抗体は、2013~2016年に西アフリカでエボラウイルスが大流行した時の生存者から単離されたものであり、先行研究から、EBOVとBDBVは中和するが、SUDVは中和しないことが明らかになっている。著者たちは、EBOVのGPと結合したADI-15946の結晶構造を決定した。この結晶構造から、ADI-15946がEBOVの基部領域にあるポケットを標的としており、これが新たな脆弱性部位であることが明らかになった。著者たちは、この情報を用いてADI-15946を改変し、その中和能の幅をSUDVまで広げた。
今回新たに見つかった脆弱性部位を探索してワクチンの開発に結び付け、改変された抗体を全てのエボラウイルスに対する有効な治療法の構成要素として利用できるかを見極めるには、さらなる研究が必要とされる。
doi:10.1038/s41594-019-0191-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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