水質がサンゴ礁の回復を後押しする
Nature Ecology & Evolution
2019年3月12日
劣悪な水質にさらされているサンゴ礁は、かく乱からの回復に時間がかかり、サンゴの病気にも脆弱であることを明らかにした論文が、今週掲載される。今回の研究から、局地的に水質を改善すれば、一部のサンゴ礁は気候変動による白化の影響を受けにくくなる可能性があるが、そのような取り組みでは、最も象徴的なサンゴ礁を救うのには不十分であることが明らかになった。
気候変動やその他の圧力が、すでにグレートバリアリーフの広大な部分に損傷を与えつつある。こうしたサンゴ礁の将来の復元力は、かく乱に耐えてサンゴの減少から回復する能力によって決まると考えられる。
Aaron MacNeilたちは今回、1995~2017年にグレートバリアリーフの46地点から収集されたサンゴ被度データを用いて、熱帯低気圧、病気の大発生、およびサンゴの白化による損傷がサンゴ礁にどのような影響を与えたのかを評価した。また、それらのサンゴ礁がさまざまな種類の損傷からどれだけ回復したのかも調べた。
MacNeilたちは、河川から流出した水がもたらす劣悪な水質がサンゴの回復に対する最大の障害であることを明らかにした。濁った水を透過する光の量が乏しいため、実は水質の劣った海域のサンゴの方が白化にはやや強いことが分かった。しかし、そうしたサンゴは白化からの回復に時間がかかり、病気の大発生にも弱かった。
一部の沿岸海域では、6~17%の水質改善によって予測されるサンゴ白化の増加が緩和される可能性があることが示唆された。このレベルの改善は、目標達成の可能性こそ低いものの、現地政府の改善計画の視野に入っている。ただしMacNeilたちは、外側陸棚のサンゴ礁に典型的な熱に弱いサンゴについては、水質の改善だけでは保護されないと警鐘を鳴らしている。
doi:10.1038/s41559-019-0832-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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