【がん】乳がんの晩期再発リスクのモデル化
Nature
2019年3月14日
乳がん患者の中で特定の複数の患者群が有する晩期再発のリスクを明らかにした論文が、今週、掲載される。このモデル化研究は、リスクの高い患者を同定する精度を向上させ、この患者群に向けた新たな治療法の開発につながる可能性がある。
乳がん患者の再発リスクは、腫瘍の生物学的特性によって大きく異なっている。こうした再発リスクの解明が進めば、長期治療法の精度が高まり、患者の転帰を改善できる可能性がある。
今回、Christina Curtisたちの研究グループは、1977~2005年に乳がんと診断された英国とカナダの患者3240人における再発と死亡のさまざまなリスクの経時変化をモデル化した。このモデルでは、がんのさまざまな状態(例えば、再発した腫瘍の原発巣からの距離など)、手術後の経過時間、死亡に影響することが知られる他の因子(例えば、年齢と腫瘍の大きさなど)が説明されている。Curtisたちは、腫瘍の晩期再発が起こる4つの乳がんサブタイプを同定した。この中には、エストロゲン受容体陽性(ER+)でヒト上皮細胞増殖因子受容体2陰性(HER2-)の乳がんの26%が含まれており、診断後20年間で再発するリスクは42~55%だった。
これらの新知見は、乳がん患者において再発リスクの推定精度を向上させ、経過観察と層別化を改善するために重要な情報となる可能性がある。ただし、今後の研究で、標的を正確に定めた治療法によってさまざまな乳がんサブタイプの転帰を変えられるかを調べる必要がある。
doi:10.1038/s41586-019-1007-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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