【動物学】ラッコは自身の考古学的記録を残している
Scientific Reports
2019年3月15日
ラッコが殻の硬い獲物をこじ開けるために用いる岩石には独特な摩耗パターンが残っていることを報告する論文が、今週掲載される。このパターンは、考古学的手法を用いて識別できるので、すでに絶滅した個体群の生息域を追跡する上で役立つ可能性がある。
ラッコは、石を道具として使って、イガイのような獲物をこじ開けることが知られている唯一の海洋哺乳類で、海中や胸部に乗せた岩石、あるいは海面ぎりぎりの高さにある巨礫に獲物を叩きつけているところが観察されている。しかし、この行動が局所環境に及ぼす物理的影響については、よく分かっていない。
Jessica Fujii、Natalie Uominiたちの研究グループは、米国カリフォルニア州中部にあるエルクホーン・スラウという感潮河口域で、ラッコが岩石を使って獲物をこじ開けている様子を10年間にわたり観察した。著者たちは、この区域にある421個の岩石を調べて、そのうちの77個に独特な摩耗パターンがあることを発見し、これらはラッコが獲物をこじ開ける際に用いた岩石と判断して矛盾がないことを明らかにした。また、この区域内では捨てられたイガイの殻が多数見つかり、その破損パターンが捕食者であるラッコの行為と矛盾しないことも明らかにした。著者たちは、これらの破損パターンによって、ラッコが岩石を使ってこじ開けたイガイとヒトや他の動物が壊したイガイを区別できた。著者たちは、岩石や貝殻に残された独特な損傷は、明確な行動上の特徴を表していて、これらを用いることで過去のラッコの採餌域を特定できる、という考えを示している。また、今回の知見は、動物界全体でも珍しく、海洋動物においては極めてまれな石の台の使用の進化を解明する際に役立つかもしれない。
doi:10.1038/s41598-019-39902-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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