【動物行動学】遊び仲間の顔の表情をまねるマレーグマ
Scientific Reports
2019年3月22日
マレーグマが遊び仲間の顔の表情を正確にまねて表出することを明らかにした初期の研究について報告する論文が、今週掲載される。こうした顔表情の模倣は、効率的で有効かつ正確なコミュニケーションを可能にすると考えられているが、家畜でない非霊長類種による顔表情模倣を観察した先行研究はなかった。
今回、Marina Davila-Rossたちの研究グループは、群れで飼育されているマレーグマ22頭について、自発的な社会的遊びに興じている時の顔表情の複雑性を調べ、特に正確な表情模倣(遊び仲間の顔表情を正確にまねる能力)に着目した。Davila-Rossたちは、マレーグマが遊び仲間との対面相互作用において、遊び相手が口を開いた表情をした時に同じように口を開いた表情をしてみせるかを調べた。
研究対象のマレーグマ22頭のうち21頭が口を開いた表情をしており、そのうちの13頭は、遊び相手と向き合った状態で遊び相手が口を開いた表情をしてから1秒以内に自らも口を開いた表情をしてみせた。この知見は、マレーグマが、社会的パートナーから観察されている時に顔の表情を変化させることを示唆しており、このことは、マレーグマがパートナーの注意に対して感受性を持っていることを意味している可能性がある。ヒトとの近縁性が高い類人猿やヒトに寄り添って暮らすイヌなどのヒトに関連する生物種の場合には、複雑な社会環境に対する適応が背景にあると考えられてきたが、野生のマレーグマは主に単独生活をするため、社会的感受性とそれに伴う顔表情の模倣の正確さを同じように説明できない。
今回の知見は、顔表情の模倣が、これまで考えられていた以上に広く浸透しており、社会的風潮が強く働く生物種に限られない可能性を示唆している。
doi:10.1038/s41598-019-39932-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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