【気候科学】中国がパリ協定で示した約束は果たされるのか
Nature Communications
2019年3月27日
中国の二酸化炭素排出量は2030年より前にピークに達する可能性が高いことが、現行の二酸化炭素排出量削減政策の分析から示唆されることを報告する論文が、今週掲載される。ただし、今回のモデル化研究は、パリ協定で示された中国の約束が果たされるのは、現行の全ての政策の完全かつ有効な実施、発電部門の改革の完了、および中国全土での排出量取引制度の完全実施の全てが実現した時に限られると結論付けている。
中国はパリ協定で、二酸化炭素排出量は2030年頃をピークとし、一次エネルギー消費において非化石燃料が占める割合を2030年までに20%に増やすという約束を示した。
今回、Fang Zhang、Kelly Sims Gallagherたちの研究グループは、中国の現在の気候政策がこうした約束を実現するために十分なのかを調べるため、中国内外のエネルギー政策と気候政策の専門家(計18人)に対するアンケート調査の結果とモデル化手法とを組み合わせて用いて、政策の有効性を調べた。著者たちのモデルに含まれる14種の政策介入(例えば、発電部門の改革、省エネ基準、林業政策など)を分析した結果、現行の政策と発表済の政策が完全実施されることを前提条件として、中国の二酸化炭素排出量のピークが早まる可能性が高いことが明らかになった。また著者たちは、非化石燃料が占める割合を20%に増やすという目標を達成するには、発電部門の改革によって電力部門を二酸化炭素から脱却させる政策が2027年までに完全実施される必要があるという見解も示している。
著者たちは、今回のモデルに一定数の政策が組み込まれているのは、個々の政策の効果にある程度の不確実性があるためだと指摘し、二酸化炭素排出量のピークが前倒しになる可能性が高いと考えられるが、気を緩める余地はほとんどないと結論付けている。
doi:10.1038/s41467-019-09159-0
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