ヒト脳では老齢期に入ってからも新しいニューロンが発生する
Nature Medicine
2019年3月26日
健康なヒト脳では、90歳に達するまで新しいニューロンが絶えず発生していることが分かった。また、アルツハイマー病患者では、新しいニューロンの形成がかなり低下することも明らかになった。
脳のニューロンの大多数は、出生までにあるべき位置に配置されるが、海馬などの特定の領域では、成体脳での新しいニューロンの生成(成体ニューロン新生)が起こる。以前の研究で、齧歯類などの脊椎動物でこの現象が起こることが立証され、当初は新しいニューロンが既存のヒト神経回路に組み込まれることも示唆されていた。しかし、最近の研究では、ヒト脳での成体ニューロン新生がどの程度起こるのかが、問題とされていた。
M Llorens-Martinたちは、58人の実験参加者由来の組織サンプルを調べ、加齢に伴ってある程度の減少はあるものの、ヒト脳の海馬では成体ニューロン新生が一生を通じて観察されることを見いだした。また、ヒトアルツハイマー病が進行するにつれ、成体ニューロン新生が急激に低下することも分かった。
著者たちは、ヒトで成体ニューロン新生が検出されなかったという以前の研究結果と今回の結果との不一致は、使われた検出方法の違い、あるいは調べられた組織サンプルの質の違いによる可能性があると述べている。新生ニューロンの検出には組織染色が不可欠であり、今回の研究では、組織の固定技術や組織の採取から処理までの時間に見られる遅れなどの要因が、組織染色の質にどの程度影響するかが評価されている。
doi:10.1038/s41591-019-0375-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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