Research Press Release
抗精神病薬がマウス髄膜炎の原因となる感染症に効果
Nature Microbiology
2019年3月26日
精神障害の治療によく用いられるフェノチアジンが、マウスの髄膜炎菌Neisseria meningitidis感染の治療にも使用できることを明らかにした論文が、今週掲載される。フェノチアジンが、ヒトの重症感染患者にも安全かつ有効かを見極めるには、臨床試験が必要となる。
髄膜炎菌は、臓器に障害を引き起こし、血液脳関門を通過して髄膜炎を起こす。臓器の障害も髄膜炎も、死亡率は高い。重症の髄膜炎では、髄膜炎菌は粘着性の付属器を使って凝集し、血管内壁に付着する。細菌に有効な従来の抗生物質は、すでに凝集した塊には効果がない。
Sandrine Bourdoulousたちは、これまで殺菌作用はほとんど知られていなかったフェノチアジンが、髄膜炎菌の粘着性付属器の働きを阻害して、培養液中で凝集塊を分散させることを見いだした。さらに、ヒトの通常用量と同等の用量のフェノチアジンをマウスに投与すると、凝集塊の発生と血管壁の損傷が抑制され、マウスの死亡が防がれることが明らかになった。この効果は、標準的な抗生物質と組み合わせて用いることでさらに高まった。
今回の研究は、髄膜炎菌を殺しはしないものの無害化する抗病原性薬が、重篤な病気の治療に有効なことを示している。病気を引き起こすのに粘着性付属器の働きを必要とする細菌は多いので、この従来とは異なる戦略は他の感染症にも役立つかもしれない。
doi:10.1038/s41564-019-0395-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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