【考古学】兵馬俑と共に埋葬されていた兵器の保存に関する新知見
Scientific Reports
2019年4月5日
秦の始皇帝の墓の近くに兵馬俑と共に埋葬されていた青銅製の兵器の表面から見つかった微量のクロムは、高度な保存方法が用いられた証拠ではない可能性があることを指摘する論文が、今週掲載される。今回の研究では、残存するクロムは武器の木質部分の表面処理に用いられた漆による汚染である可能性が示唆されており、今から2000年以上前に秦代の職人がクロムを用いた防錆系を開発したとする長年の仮説に疑問を投げ掛けている。
中国の西安で見つかった秦代の兵馬俑は、秦の始皇帝(紀元前259~210年)のために製作された。兵馬俑が埋葬されていた兵馬俑坑は、1970年代に初めて発掘され、これまでのところ、兵士をかたどった保存状態の良い陶器約2000点と完全に機能する兵器が出土している。先行研究では、兵器の保存状態が良好なのは、秦代の職人が「来世」での兵器の腐食や崩壊を防ぐための防錆処理に使用したクロムによることが示唆されていた。
今回、Marcos Martinon-Torresたちの研究グループが兵馬俑坑から発掘された兵器464点を調べたところ、クロムが検出されたのはそのうちのわずか37点だった。Martinon-Torresたちは、クロムが一部の兵器からのみ検出されたのは、秦代の職人が使用していた漆による汚染によるものだと考えている。兵器の取付具(例えば、取っ手、握り部分、さや)付近の部分からクロムが検出される確率は88%だったが、矢じりや刀身の試料からクロムが検出される確率は2%以下だった。Martinon-Torresたちは、このような分布パターンになったのは、これらの金属部品が、埋葬後に腐朽した木製部品の表面処理に用いられた漆の近くにあったからだと主張し、クロム以外に兵器の保存に寄与したと考えられるいくつかの要因(例えば、一部の青銅のスズ含有量が多かったことや兵馬俑坑の土壌の組成など)を提案している。
doi:10.1038/s41598-019-40613-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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