Research Press Release

危険な火山流は摩擦の裏をかく

Nature Geoscience

2019年4月9日

高温のガスと火山物質が高速で流れる火砕流は、自己生成された空気層をほとんど摩擦なしで移動するため、非常に速く遠くまで流れることを明らかにした論文が、今週掲載される。

火山噴火は、噴出した柱状のマグマの一部が崩壊したり、溶岩ドームの一部が崩壊したりすると、火砕流を生成し得る。火砕流は、温度が1000℃に達し、噴火口から何キロメートルも移動することがある。火砕流は重大な災害であり、全球的な火山災害犠牲者の原因のおよそ50%を占める。しかし、それがどうしてそれほど速く、遠くまで移動するかは良く分かっていない。

今回Gert Lubeたちは、大規模な火山シミュレーション実験を行った。彼らは1トン以上の高温の火山物質を観測機器を設置した35メートルの溝に流し、その様子を高速ビデオで記録した。その結果、空気を多く含んだ層が火砕流の底部に生成されることが明らかになった。火砕流が地面に流れ下った時の速度変化率が大きいと、火砕流は自己組織化する。高圧により火山物質が密に充填された領域が流れの底部近傍に生成されると、ガスは地面の方向に移動して、地面とその上の高密度領域との間に空気の層が形成される。この空気の層によって、地面の上をほとんど摩擦なしで流れることが可能となる。

Lubeたちは、今回の発見が、将来起きる火砕流の到達距離や速さについてのより正確な災害評価に役立つ可能性があることを示唆している。

doi:10.1038/s41561-019-0338-2

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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