カッシーニ探査機で明らかになったタイタンのメタンの湖
Nature Astronomy
2019年4月16日
土星の衛星タイタンの炭化水素の湖の進化について報告する2本の独立した論文が、今週掲載される。これらの研究は、タイタンにある一部の炭化水素の湖が100メートルを超える深さであり、数千年にわたってメタンの降雨が注ぎ込まれていることを示唆している。一方で、1シーズンで干上がるような数ミリメートルの深さの池もあった。
タイタンは、地球以外で液体の物質がその表面に安定に存在できる唯一の太陽系天体である。昼間は平均で摂氏-180度と低温なため、タイタンの湖や海は水ではなく炭化水素からできている。地球の水循環と同様に、タイタンでのメタンの完全な「炭化水素循環」は、大気、地表、そして地表下を結び付けている。
今回、Shannon MacKenzieたちの論文では、NASAのカッシーニ探査機によるレーダーとスペクトルのデータを用いて、冬の間は液体のようだが、春になると陸地のように見える、タイタン北部の「湖水地域」における3つの地形を明らかにしている。MacKenzieたちは、そのような「幻の湖」は浅い池であり、タイタンの7年にわたる冬から春への移行期の間に蒸発したか、地面に排出されたと結論付けた。また、Marco Mastrogiuseppeたちは別の論文で、カッシーニ探査機が最後に接近通過した際のレーダーのデータを用いて、深さ100メートルを超える可能性のある湖を観測した。Mastrogiuseppeたちは、こうした湖は数千年前に、地表で可溶性の岩石を溶かすメタンの雨によって形成されたという考えを示している。また、メタンは、雨によって池が再び満たされるよりも遅い速度で地上に排出されていることも明らかになり、これは湖が干上がることを妨げている。
両研究は、タイタンの湖の動的な性質と、それに関連した炭化水素循環を明らかにしている。これは地球とよく似ていて、季節性から地質年代でいう世レベルの期間にわたる変化を伴うことがある。
doi:10.1038/s41550-019-0714-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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