小さなティラノサウルスが大きな空白を埋める
Nature Ecology & Evolution
2019年5月7日
米国ニューメキシコ州で出土した小型のティラノサウルス類恐竜の新発見種の化石について記載した論文が、今週報告される。その標本は、それぞれ複数の骨が保存されている若齢の2個体の骨格であって約9200万年前のものと推定されており、解明が進んでいないTyrannosaurus rexやその近縁種の起源に関する洞察をもたらす。
巨大なティラノサウルスは、8000万~6600万年前の後期白亜紀に繁栄した。しかし、ティラノサウルス類の起源は、現在の北米で中期白亜紀に起こった海水準上昇に伴う標本発見の全般的空白のためにほとんど明らかにされていない。S Nesbittたちは、ニューメキシコ州のズニ盆地で新たなティラノサウルス類の骨格を2点発見した。その化石は、中期白亜紀のティラノサウルス類として史上最も完全に近い標本である。現地のズニ語でコヨーテを表す‘suski’からSuskityrannus hazelaeと命名されたこの恐竜は、頭蓋の全長が25~32 cmであった。その標本は若齢個体のものであったが、S. hazelaeは成体でもT. rexのような後期白亜紀の近縁種と比べてはるかに小型であったと推定された。S. hazelaeは、小型ではあったが、走ることに特別に適応した足と強力な咀嚼力を備えていた。こうした特徴の組み合わせは、初期のティラノサウルス類やその後の大型化したティラノサウルス類には認められない。
研究チームは、解析の結果、S. hazelaeを最初期の種を分けた最小の種と後期白亜紀の巨大種の間の中間的なティラノサウルス類として位置付け、この新種がティラノサウルス類の進化史における重大な空白を埋めるものと結論付けている。
doi:10.1038/s41559-019-0888-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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