Research Press Release

【生態学】河川の連結性の低下

Nature

2019年5月9日

世界最長クラスの河川(全長1000キロメートル超)のうち、自由に流れているものは3分の1だけで、これらは遠隔地(北極やアマゾン川流域、コンゴ川流域)に限られることを明らかにした論文が、今週掲載される。この知見は、河川の連結性が人間の活動によって破壊され、そのために、自由に流れる河川がもたらす生態系と各種サービスが脅かされていることを実証している。

河川は重要な生態系であり、食料や水、経済資源、農業の機会をもたらすことで人間社会を支えている。近年、人間活動での必要性に応じて河川の自然流路が変更され、社会基盤(ダムや堤防など)の整備に合わせた管理が行われている。河川の連結性が重要であることは認識されてきているが、その現状を評価することは、全球的な情報が不足しているために困難だった。

今回、Gunther Grillたちの研究グループは、河川の連結性を包括的に評価する新しい方法を開発して、世界各地の河川(総延長1200万キロメートル)を評価した。この方法には、よく知られたダムの影響が考慮されているだけでなく、河川の連結性に対する幅広い人為的影響を表す重要な要因(側方への流れや浸透に対する防御壁、水の利用と規制、堆積物捕捉など)が加味されている。この方法による評価の結果、世界の全河川の約半数で連結性が低下していて、世界最長クラスの河川(全長1000キロメートル超)の63%(世界の河川の水量の約41%)が、もはや自由に流れていないことが明らかになった。Grillたちは、ダムや貯水池は、河川の流れを制御・遮断するため、河川の連結性低下の主な要因だと指摘している。

doi:10.1038/s41586-019-1111-9

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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