【がん】小児脳腫瘍マウスモデルの生存を促進するウイルス
Nature Communications
2019年5月29日
2種類の小児脳腫瘍のマウスモデルの生存期間を延長する上で、がん細胞を標的とする腫瘍溶解性ウイルスが有効なことを明らかにした論文が、今週掲載される。この新知見をきっかけに、このウイルスを用いた臨床試験が行われている。
小児脳腫瘍である高悪性度グリオーマとびまん性内在性橋グリオーマは、治療が困難で、成人のグリオーマとは遺伝的に異なっている。高悪性度グリオーマの患者は手術と放射線療法、化学療法による治療を受けているが、びまん性内在性橋グリオーマと診断された小児の場合、手術は適切な治療法とされていない。腫瘍溶解性ウイルスは、黒色腫の治療に使用することが米国食品医薬品局(FDA)によって承認されており、Delta-24-RGDウイルスは、成人のグリオーマ患者に有効かつ安全なことが明らかになっている。
今回、Marta Alonsoたちの研究グループは、高悪性度グリオーマとびまん性内在性橋グリオーマのマウスモデルにおけるDelta-24-RGDウイルスの有効性を検証した4種のがんマウスモデルにおいて、生存期間が未処置のマウスより長くなることが明らかになった。ウイルスタンパク質は長期生存マウスで検出されなかったことから、この方法は安全だと示唆された。さらに、ウイルスがマウスの免疫応答を誘発することが示され、こうした免疫系の活性化が抗がん応答に寄与することが示唆される。以上の知見から、Delta-24-RGDウイルスを用いる方法がこれらのがんを持つ小児を治療する上で有効な可能性があるが、この点は、臨床試験の結果によって確認される必要がある。
doi:10.1038/s41467-019-10043-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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