HIVに対する保護的変異が死亡率の上昇に関連する
Nature Medicine
2019年6月4日
CCR5のΔ32変異(欧州人をHIV感染から守る働きをしている)を2コピー持つ人は、死亡率が21%上昇することを報告する論文が、今週掲載される。この知見は、ヒトへの変異導入がもたらす予想外の結果が、健康にどのような影響を与えるかをさらに詳しく理解する必要があることを示している。
2018年、Jiankui Heは、CRISPRを用いてヒト胚でCCR5遺伝子を編集し、その結果2人の赤ちゃんが誕生したと発表した。変異導入の目的は、天然に生じたCCR5 Δ32変異の効果を模倣することだった。しかしこれまでの研究で、この変異を持つ人はインフルエンザなど特定の感染症にかかるリスクが高いことも示唆されていた。
今回Xinzhu WeiとRasmus Nielsenは、英国バイオバンクに蓄積された40万人以上について遺伝子型と死亡届の情報を解析し、CCR5 Δ32変異が平均余命に与える影響を調査した。すると、CCR5 Δ32変異を2コピー持つ人(CCR5 Δ32/Δ32)は、CCR5 Δ32変異を持たない人や1コピーだけ持つ人に比べると、76歳に達する確率がおよそ20%低いことが分かった。また、英国バイオバンクのコホートに参加登録した時点でのCCR5 Δ32/Δ32の個体数が、期待されるより少ないことも判明した。これは、CCR5 Δ32のホモ接合は有害であるという見方と符合する。このような知見が他の集団にも当てはまるかは、今後調べるべき課題である。
doi:10.1038/s41591-019-0459-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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