【ゲノミクス】古エスキモーとシベリア人の集団史の謎が氷解し始めた
Nature
2019年6月6日
シベリアと北米の古代人と現代人のゲノム解析が行われ、これらの地域における主要な移住現象とヒト集団史に関する手掛かりが得られたことを報告する論文が、今週掲載される。
古エスキモーは、約5000年前に広大なアメリカ北極域に最初に定住した人々であり、約1000年前に新たに加わった現在のイヌイット族とユピック族の祖先に取って代わられた。古エスキモーとアメリカ先住民、イヌイット族、ユピック族、アレウト族の遺伝的関係は、はっきりとは分かっていない。
今回、Stephan Schiffelsたちは、アメリカ北極域とシベリア(チュクチ、東シベリア、アリューシャン列島、アラスカ、カナダ北極域を含む)出身の古代人48人と、現代のアラスカのイヌピアットと西シベリアに住む人々のゲノムのデータを示している。Schiffelsたちの分析によれば、北米のヒト集団史は、古エスキモーとファースト・アメリカンの間の遺伝子流動によって形成され、そこからエスキモー・アリュート語とナ・デネ語を話す集団の出現に至ったとされる。
一方、Eske Willerslevたちは別の論文で、現在のロシア極東地域に位置するシベリア北東部に由来する、3万1000~600年前のものと年代測定された34の古代ゲノムについて報告している。この地域は、4万年以上にわたってヒトが居住しているが、その詳しい集団史の解明は進んでいない。Willerslevたちは、この時期の複雑な集団動態について説明しており、これには、(1)これまで知られていなかった旧石器時代の古代北シベリアの集団(初期の西ユーラシアの狩猟採集民と遠い類縁関係にある)がこの地域に初めて到来したこと、(2)その後の古代人(古シベリア人とアメリカ先住民)につながる東アジアの民族が到来したこと、(3)多くの現代シベリア人の祖先である新シベリア人と呼ばれる東アジア人が完新世に移住したこと、という少なくとも3つの主要な移住現象が含まれる。
doi:10.1038/s41586-019-1251-y
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