【生態学】捕食者の侵入がトカゲの共存を崩壊させる
Nature
2019年6月6日
捕食者であるトカゲをカリブ海の小島嶼に移入させたところ、在来のトカゲの個体群の行動が変化し、結果として異種のトカゲの共存様式が変化し、個体群の絶滅につながったことを報告する論文が、今週掲載される。今回の研究では、こうした影響が、全世界の島嶼や湖での捕食者の移入シナリオにも当てはまる可能性のあることが示唆されている。
島嶼などの孤立していた生態系への捕食者の定着が、人間の活動によって加速している。ただし、捕食者の侵入による影響については、侵入当初から研究を始めることがほとんどできないため、予測が難しい。
今回、Robert Pringleたちの研究グループは、捕食者の侵入による影響を明らかにするため、バハマ諸島の16の島嶼において、2種のトカゲを島ごとに異なる組み合わせで移入させる実験を行った。バハマ諸島は、半陸生のブラウンアノール(Anolis sagrei)によって占められており、Pringleたちは、ここに5~7匹のキタゼンマイトカゲ(Leiocephalus carinatus、地上に生息する最上位捕食者)および/または10~11匹のバハマングリーンアノール(Anolis smaragdinus、樹上に生息する競争者)を移入させた。そして、これら3種のトカゲについて、個体群サイズ、生息場所の利用状況、食餌の構成、および食物連鎖上の位置を6年間にわたって測定した。
キタゼンマイトカゲが存在しない環境では、バハマングリーンアノールとブラウンアノールは、それぞれ異なる食餌と生息場所のニッチを占め、ブラウンアノールが地上に近い場所に生息していた。ここにキタゼンマイトカゲを移入させると、ブラウンアノールが樹上で生息するようになり、その食餌はバハマングリーンアノールの食餌に近づいた。その結果、ブラウンアノールとバハマングリーンアノールの両方を移入させた4つの島のうちの2つで、食料源の争いに敗れたバハマングリーンアノールが絶滅した。この知見は、孤立した生態系に新たな捕食者種が侵入すると、異種の共存を容易にしていたニッチの崩壊が起こり得ることを示している。
doi:10.1038/s41586-019-1264-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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