【環境】自然災害によって世界の輸送インフラに生じた被害額の評価
Nature Communications
2019年6月26日
自然災害によって世界の道路インフラと鉄道インフラに生じた損害の年間被害額の平均値が、約146億米ドル(約1兆6000億円)に達する可能性があることを明らかにした論文が、今週掲載される。今回行われたモデリング研究では、この損害の約73%は、極端な降雨によって引き起こされた地表水と河川の氾濫によることが示唆されている。
今回、Elco Koksたちの研究グループは、世界の道路と鉄道の資産データと、ハザードマップを使って、世界の輸送インフラが、熱帯性低気圧、地震、陸面氾濫による洪水、河川の氾濫による洪水、沿岸洪水などの自然災害にどれほどさらされており、これらの自然災害がどれほど大きなリスクとなっているかを算出した。その結果、世界の輸送インフラの約27%が、1つ以上の自然災害に遭遇しており、全球の年間被害予想額が31億~220億ドル(約3400億円~2兆4200億円)に及ぶ可能性のあることが判明した。またKoksたちは、こうした自然災害に対して特に脆弱なのが、パプアニューギニアなどの小島嶼開発途上国の輸送インフラであることを明らかにした。被害額の絶対値が最も大きかったのは、中国や日本などの高所得国であったが、リスクのGDP比は、ジョージアやミャンマーなどの中所得国の方が大きかった。
Koksたちは、各国が交通計画を行う際にリスク情報を評価に組み込んで改善を図ることが重要だと主張している。これは、自然災害による損害を防止するための主要な改善に目標を絞り込むことで、全ての交通資産に対する予算の支出額を最小限に抑えるのに役立つ可能性がある。
doi:10.1038/s41467-019-10442-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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