カカオ農場労働者の生計に対するフェアトレードの影響の評価
Nature Sustainability
2019年7月2日
フェアトレード生産は、協同労働者の賃金を向上させ貧困を低下させているが、小規模農家で働く農場労働者では賃金の向上と貧困の低下は見られないという、コートジボワールのカカオ農場労働者に関する研究が今週掲載される。
発展途上国の農村地域の労働者は、不安定な労働条件、低賃金、貧困に直面することが多い。フェアトレードなどの持続可能性基準は、こういた状況を改善する可能性がある。これまでの研究は、フェアトレードが小規模農家に及ぼす影響に重点を置いてきたが、農場に雇われた労働者に重点を置いた研究はほとんどなかった。
今回E-M Meemkenたちは、500か所の農場と協同労働者、そしてその雇用者(フェアトレード認証を受けているものと受けていないものを含むコートジボアールの50のカカオ協同組合と500人の農場主)の調査を行った。著者たちは、こうしたインタビューの結果を分析し、経済学的な推定法を用いて農場労働者と協同労働者の利益を識別し、世帯収入、物納、労働環境、雇用保障の季節変動を調べた。
そして著者たちは、フェアトレード基準は、協同労働者のより高い賃金や労働者の福利の向上につながっているが、農場労働者の賃金や作業環境はフェアトレード規制の影響を受けていないことを示している。彼らは、農場レベルの労働基準の定義や監視が不十分であることなど、こうした相違についていくつか理由を示している。
今回の分析結果は、フェアトレードが、認証された生産に関わっているあらゆる人々に利益をもたらすという考えに異議を唱えるものである。著者たちは、サプライチェーンの全てのレベルに適用して公正な労働を確保する、明確に策定された規則の必要性を強調している。他の国々や作物、サプライチェーンの弱い立場にある労働者群を調べるには、さらなる研究が必要である。
doi:10.1038/s41893-019-0311-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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