心血管疾患発症リスクのある患者の健康状態を腸内細菌の投与によって改善する
Nature Medicine
2019年7月2日
特定の腸内細菌の量を増やすことが、体重過多(標準体重を超過している)あるいは肥満の人に有益な影響をもたらす可能性があることが、小規模な臨床試験で示された。Akkermansia muciniphilaは腸内細菌の一種で、体重過多や肥満、もしくは未治療の2型糖尿病や炎症性腸疾患がある患者では腸内の存在量が低下している。今回の実験では、この菌のヒトへの投与が安全であり、健康状態の改善につながることが明らかになった。
患者数が世界的に増加しつつある心血管代謝疾患に対処する方法の1つとして、腸内微生物相を標的とする介入は研究者の関心を集めている。以前に行われた動物モデルを使った研究では、A. muciniphilaに健康増進作用があり、肥満や耐糖能異常、インスリン抵抗性、肝臓の脂肪蓄積を軽減することが明らかになっている。
P Caniたちは、概念実証研究としてA. muciniphilaの生菌、もしくは低温殺菌処理した菌のヒトへの投与を行い、投与は安全で耐容性が良好であることを示した。この実験では、32人のボランティアがプラセボもしくはA. muciniphilaのどちらか一方を、補助食品として3か月間摂取した。プラセボを摂取した参加者と比較したところ、低温殺菌処理したA. muciniphilaを摂取した参加者だけにインスリン感受性の改善、インスリンレベルの低下、腸の障壁機能改善の兆候、血中コレステロールの低下などが見られた。低温殺菌処理したA. muciniphilaの有益な作用が3か月以上持続するかどうかを確認し、もっと多くの患者が参加する対照臨床試験で効果を評価するには、さらに研究が必要だと著者たちは述べている。
doi:10.1038/s41591-019-0495-2
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