【老化】老化した脳における免疫浸潤
Nature
2019年7月4日
マウスを使った研究で、新しいニューロンの産生(神経原性ニッチ)に寄与する細胞集団において年齢依存的な変化が観察されたことを報告する論文が今週掲載される。今回の研究から、加齢に伴う神経原性ニッチの衰退における免疫系の役割が明らかになった。この新知見は、老化した哺乳類の脳におけるニューロン前駆細胞の減少を食い止める戦略に役立つ情報となるかもしれない。
哺乳類の脳には、神経幹細胞、神経前駆細胞とその他のいくつかの細胞型から構成される神経原性ニッチ内で新しいニューロンを産生する能力がある。神経原性ニッチの機能と新しいニューロンを産生する能力は年齢とともに低下し、この影響が、認知機能の低下の一因と考えられている。しかし、神経原性ニッチが年齢とともにどのように変化するのか、そして、何がこうした変化を引き起こすのかという点は解明されていなかった。
今回Anne Brunetたちの研究グループは、3匹の若齢マウス(3か月齢)と3匹の高齢マウス(28~29か月齢)の脳細胞の特性解析を行い、若齢マウスと高齢マウスの神経原性ニッチの細胞組成を比較した。1万4685個の単一細胞のRNA配列の解析が行われ、活性化した神経幹細胞と神経前駆細胞の減少、高齢マウスの脳におけるT細胞(免疫細胞の一種)の浸潤など、神経原性ニッチの年齢依存的変化が明らかになった。高齢マウスの脳に由来するT細胞は、シグナル伝達分子の一種であるインターフェロンγを分泌しており、インターフェロンγが、培養神経幹細胞の増殖を抑制することも判明した。以上の結果から、加齢に伴うニューロン補充能力の低下の原因と考えられるものが明らかになり、加齢に伴う認知障害に免疫に基づいた戦略で対処する道が開かれるかもしれない、と著者たちは結論付けている。
doi:10.1038/s41586-019-1362-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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