【健康科学】過去の宇宙放射線被曝の健康影響を再評価する
Scientific Reports
2019年7月5日
米国の宇宙飛行士(301人)と旧ソ連・ロシアの宇宙飛行士(117人)に関する過去のデータの統計解析が新たに行われ、この解析から宇宙飛行士の過去の宇宙放射線被曝線量は、がんや心血管疾患による高い死亡リスクと関連していないことが示唆された。この研究知見が、今週掲載される。
宇宙飛行士は、深刻な健康上のリスクをもたらす可能性のある独特な種類の電離放射線を被曝しているが、これまでの解析研究では、心血管疾患とがんによる死亡リスクと電離放射線との間に何らかの関係があることを示す決定的な証拠は得られていない。
今回、Robert Reynoldsたちの研究グループは、複数の統計的方法を用いて、1959年以降に選抜された米国NASAの宇宙飛行士と1961年以降に選抜された旧ソ連/ロシアの宇宙飛行士で、追跡調査期間の終了日(米国の宇宙飛行士は2018年7月、旧ソ連/ロシアの宇宙飛行士は2017年12月)より前に少なくとも一度は宇宙飛行を行った者全員について、公開されているデータの解析を再び実施した。この研究によって得られた知見からは、研究対象集団内で発生した心血管疾患とがんに共通の根本的原因がなく、これらの宇宙飛行士の電離放射線被曝線量が、心血管疾患とがんによる高い死亡リスクと関連していないことが示唆される。
Reynoldsたちは、将来の深宇宙探査ミッションでは、過去のミッションよりもかなり高線量の宇宙放射線に被曝する可能性が高く、将来の宇宙飛行士のリスクプロファイルが変化する可能性がある点に警鐘を鳴らしている。
doi:10.1038/s41598-019-44858-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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