【工学】1台でクリーンなエネルギーと水を作り出せるデバイス
Nature Communications
2019年7月10日
太陽光を使って水質浄化と発電を同時に実現する単一のデバイスについて報告する論文が、今週掲載される。この新知見は、将来的に乾燥地域と半乾燥地域におけるエネルギーと清浄水の不足を緩和するために役立つ可能性がある。
エネルギーと清浄水に対する需要が世界的に増加していることは、持続可能な開発にとって1つの課題だ。水力発電には大量の水を要し、一方で、水質浄化施設を稼働するには電力が必要である。太陽光は、太陽電池と水質浄化装置の双方にとっての持続可能で再生可能なエネルギー源として用いることができるが、いずれの技術もエネルギー効率と費用効率が十分でない。
今回、Peng Wangたちの研究グループは、太陽光発電と多段膜蒸留という2つの既存の太陽利用技術を組み合わせて、発電と水質浄化を同時に実現した。膜蒸留は、比較的低温な状態を条件として、太陽エネルギーで駆動される高度なプロセスで、効率的な水分の蒸発と収集を可能にする。Wangたちは、太陽電池パネルの背面に取り付ける3段膜蒸留装置を設計し、通常は、太陽電池パネルによって放散される熱を使って水分を蒸発させた。この装置は市販の太陽電池と同等の効率を示すと同時に既存のほとんどの装置より高率で清浄水を生成する。
1つの装置に両方の機能が統合されているためにエネルギー効率が向上しており、Wangたちは、この装置が、水力発電所を水の消費者から水の生産者へ転換させる上で役立つと考えており、さらに、太陽放射量が多いが真水が不足している地域での排水の再利用に貢献できると期待している。
doi:10.1038/s41467-019-10817-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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