【気候変動】気候変動のスピードに動物の適応がついていけない
Nature Communications
2019年7月24日
気候変動のペースが速過ぎて、一部の動物種は十分に迅速な適応ができなくなっているというメタ解析の結果を示した論文が、今週掲載される。このメタ解析の結果から、一部の動物種は、気温上昇に合わせて季節的ライフサイクルを前倒ししてきているが、一部の個体群では、こうした適応的変化が長期存続性を確保できる速さになっていない可能性のあることが示唆されている。そのようなリスクがあるとされるのが、ヨーロッパ産ノロジカ、ウタスズメ、一般的なウミガラス、ユーラシア産カササギの個体群などだ。
気候変動は、動物種のこれまでのフェノロジー(繁殖、渡りなどのライフサイクル上の出来事のタイミング)が現在の気候に合っていないことを意味している。動物種は、そのフェノロジーを変えることで気候変動に応答できる可能性を秘めているが、その行動や発達過程を変えるために十分な遺伝的変異または可塑性がある場合に限られる。
今回、Viktoriia Radchukたちの研究グループは、1万90編の科学論文の抄録を検討した上で、71編の既発表論文(13か国の17動物種に関する論文)からデータを抽出し、気候変動に対する動物の応答を、特に鳥類に焦点を合わせて評価した。その結果、フェノロジーの変化は、気候変動に対する適応的変化である傾向が見られ、地球温暖化に合わせる方向に変化していることが明らかになった。これに対して、気候変動に応答して動物の形態が必ず変化するといった傾向は検出されなかった。
Radchukたちは、フェノロジーの変化によって気候変動の有害な影響の一部が緩和されるかもしれないという観察結果を示している。しかし、Radchukたちは、気候変動とフェノロジーの変化の間にタイムラグが存在することを見いだしており、多くの個体群では、このタイムラグがあまりに大きく、その存続性が脅かされているという計算結果も示している。
doi:10.1038/s41467-019-10924-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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