【生態学】漁業の脅威にさらされているサメ
Nature
2019年7月25日
外洋性捕食魚類の象徴的存在であるサメの生息域の約4分の1で漁業が活発に行われており、これがサメの存続を脅かしている可能性があることを明らかにした論文が今週掲載される。この発見は、減少傾向にあると報告されている遠洋サメを保護するための保全活動が緊急に必要なことを示している。
遠洋性(外洋性)のサメは回遊性が高く、広大な海域を移動しており、そこには漁業水域も含まれている。大型の遠洋サメは、漁業によって捕獲されたことが確認されているサメ全体の約半数を占めている。漁獲量に関する漁業データは不完全なことがあるので、サメの生息域と商業漁業水域がどの程度重複しているのかを突き止めるのは困難だ。
今回、David Simsたちの研究グループは、人工衛星を用いて追跡した遠洋サメの動きと全世界の漁船団の動きを組み合わせて、全球的な空間利用の重複を評価した。Simsたちは、衛星発信機で標識した合計1681匹の大型の遠洋サメ(23種)を追跡し、漁船の動きは、安全と衝突防止のためのシステムによってモニタリングした。その結果、1か月平均で、サメが使用した空間の24%に遠洋延縄漁船の航跡が認められた。外洋でのサメ捕獲の大部分は遠洋延縄漁船によるものである。ホオジロザメやニシネズミザメなどの保護種が頻繁に回遊する海洋域では、遠洋延縄漁船団との重複度が高かった(約64%)。
これらの研究知見は、遠洋サメが漁船から避難する場所が限られていることを示している。Simsたちは、遠洋サメを保護するための保全活動が必要であり、サメが活動する水域の周辺に大規模な海洋保護区を設定することが1つの解決策になり得るという考えを示している。
doi:10.1038/s41586-019-1444-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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