トマトの疫病をスマートフォンで見つける
Nature Plants
2019年7月30日
スマートフォン利用型のセンサーを用いることで、トマト植物体の微生物感染を検出できることを示した報告が、今週掲載される。このシステムは、作物を弱らせる病害を早期に発見して、その病害へ対処する上で役立つ可能性がある。
作物の減収の20~40%は、植物の病害によって引き起こされている。疫病(late blight)は、Phytophthora infestansという微生物によって引き起こされる。P. infestansは、トマトやジャガイモの植物体にたちまち侵入し、処置しなければ数日でそれを枯死させる。有利な気象条件では瞬く間に広がり、広範囲の流行を生じることもある。最も顕著な例として、P. infestansは19世紀にアイルランドのジャガイモ飢饉を引き起こした。
今回、Qingshan Weiたちは、感染から2日以内にトマトの疫病を検出することができるセンサーを開発した。研究チームは、感染した植物の葉が産生する揮発性有機化合物と反応する化学修飾金ナノ粒子を用いた。その反応によって、色の変化が生じ、それがスマートフォンのカメラで捉えられる。このデバイスは、盲検試験において、疫病を95%の正確度で検出することができた。
Weiたちは、この技術が、症状が目に見えないうちに疫病を検出し得ることを明らかにしている。これによって、疫病の蔓延を予防するための初期対応が可能になるかもしれない。Weiたちは、別の比色指示薬と組み合わせれば他の作物病害にも利用可能なのではないかと述べている。
doi:10.1038/s41477-019-0476-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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