【医学研究】AIを使って急性腎障害の発症を事前予測できる可能性
Nature
2019年8月1日
人工知能(AI)システムを使うことで、急性腎障害の発症予測が、実際の発症より最長48時間も前に可能になった。今週掲載される論文に説明されているこの方法は、健康状態が悪化するリスクのある者を早期治療が可能な時間枠内で特定する上で役立つ可能性がある。
病院内で患者が死亡した症例の11%は、健康状態が悪化する患者の迅速な特定と治療ができなかったことが原因だと推定されている。今回、Joseph Ledsamたちの研究グループは、この問題に対処するため、深層学習を使って患者のリスク因子を評価する方法を開発した。そして、この方法は、急性腎障害の予測に適用可能なことが実証された。急性腎障害は、命に関わる恐れのある疾患で、米国の入院患者の約5人に1人が発症する。
このAIシステムの訓練には、米国の退役軍人医療制度の下で治療を受けた70万人以上の患者のデータが用いられた。このAIシステムを用いると、急性腎損傷の症状発現の55.8%が、標準的な臨床モニタリング法で明らかになる時点より最長48時間前に正確に予測された。また、このAIシステムは、透析治療を必要とする重症患者の最大90.2%を特定することにも成功した。この早期警報により、回復不能な腎損傷が起こる前に治療を行うことが可能になる。
ただし、Ledsamたちは、今回の研究にいくつかの限界があることも指摘している。例えば、陽性判定と偽陽性判定の比率が1:2だったのだ。ただし、偽陽性判定になった症例の多くで患者がすでに慢性腎障害を発症していた。さらに、AIシステムのトレーニングに用いられたデータのうち女性患者のデータはわずか6.38%であったため、この方法をより広範な集団にどの程度適用できるのかは不明である。それでも、今回の結果は、AIシステムによって入院患者に生じるいくつかの有害事象を予測し、予防する可能性を生み出している。
doi:10.1038/s41586-019-1390-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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