【物理学】新開発の人工知能チップは汎用人工知能の開発を促進できるだろうか
Nature
2019年8月1日
新開発の人工知能チップによって駆動される自律走行自転車が実証されたことを報告する論文が、今週掲載される。このチップは、人間の脳から着想した人工知能開発アプローチとコンピューター科学に基づく人工知能開発アプローチを組み合わせて作製された。このハイブリッド技術は、両方の人工知能システムの能力を向上させて、汎用人工知能(原理的に人間が実行可能なすべての課題を実行できるプラットフォーム)を実現できると考えられている。
現在のところ、汎用人工知能を開発する一般的なアプローチが2つある。1つは、神経科学に基づいて脳を厳密に模倣しようとするもので、もう1つは、コンピューター科学的なアプローチで、コンピューターを使って機械学習アルゴリズムを実行する。最終的な目標は、この2つを組み合わせることだと考えられているが、この2つの人工知能システムは、それぞれ独自の互換性のないプラットフォームを使用するため、汎用人工知能の開発が制約を受けている。
今回、Luping Shiたちの研究グループは、両方のアプローチを統合できる電子チップを開発した。このハイブリッドチップには、高度に再構成可能な機能コアが数多く搭載されており、機械学習アルゴリズムと脳から着想した回路の両方に対応できるようになっている。今回の研究では、自動運転自転車システムを使って、このハイブリッドチップの処理能力が実証された。この自転車は、音声コマンドに応答し、自律的にバランスをとり、人間を検出して追従し、障害物を回避できる。Shiたちは、この研究結果が、現在進行中の汎用人工知能のためのプラットフォームの開発に寄与する可能性があると結論している。
doi:10.1038/s41586-019-1424-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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