【微生物学】英国ロンドンで頻繁に手が触れる場所における多剤耐性菌の存在度
Scientific Reports
2019年8月2日
英国ロンドンの地下鉄の駅やショッピングセンターのように、一般市民が利用する場所やロンドン内の病院の共用部分の表面から採取した試料に多剤耐性菌がどの程度含まれているのかを評価する研究が行われ、その結果について報告した論文が、今週掲載される。
今回、Hermine Mkrchytanたちの研究グループは、感染症を引き起こすことが知られている細菌群である抗生物質耐性ブドウ球菌の存在度を比較するため、ロンドン東部とロンドン西部で人間の手が触れることの多い部位の表面を検査用綿棒で拭き取って試料を採取した。具体的には、一般市民が利用する場所のドアの取っ手、肘掛け、トイレの便座などの表面と病院内の共用部分(受付、トイレ、廊下、エレベーターなど)である。Mkrchytanたちは、採取された試料から、計600のブドウ球菌分離株を特定した。そのうちの281株(46.83%)は、2種類以上の抗生物質に耐性を示し、耐性の多かった順はペニシリン(80.42%)、フシジン酸(72.4%)、エリスロマイシン(54.45%)だった。
多剤耐性菌の割合が高かったという点では、病院内の共用部分(49.5%)が病院以外の一般市民が利用する場所(40.66%)を上回り、ロンドン東部で採取した試料(56.7%)がロンドン西部で採取した試料(49.96%)を上回った。Mkrchytanたちは、病院内での抗生物質使用の増加とロンドン東部の人口密度がロンドン西部より高いことが結果に反映されている可能性があると述べている。これらの試料からは、抗生物質耐性を付与するさまざまな遺伝子が見つかっており、その中には以前明らかにされていなかったものも含まれていた。このような一般市民が利用する場所で発見された抗生物質耐性菌が最初に出現した場所を確定する上では、さらなる解析が役に立つかもしれない。
doi:10.1038/s41598-019-45886-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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