マヤ社会における暴力的な争いは、考えられていたよりも早くから起こっていた
Nature Human Behaviour
2019年8月6日
マヤ低地で、繁栄と芸術的洗練のピークとされる時期に、人々の間で過激な争いが起きていたことを示す証拠について報告する論文が、今週掲載される。今回の研究から、マヤ社会では、従来考えられていたよりも早い時期に、都市の広域の崩壊につながる暴力的な争いが繰り広げられていたことが示唆される。
古典期(西暦250~950年)におけるマヤ社会の争いについてはこれまで、儀式的なものであって、その範囲は限定的だと見なされてきた。一方で学者たちは、古典期末期(西暦800~950年)における暴力的な争いの証拠を、マヤ文明の崩壊を促進した、争いの段階的拡大と解釈してきた。
今回、David Wahlの研究グループは、マヤ社会では、古典期末期よりかなり早い時期に広範な争いが生じていたことを明らかにしている。Wahlたちは、西暦697年5月21日にウィツナル(現在のグアテマラ北部)が2回にわたって攻撃を受けて焼き払われたと記された、ウィツナル南部に位置する古代マヤ都市ナランホで発見されたヒエログリフで刻まれた碑文を解析した。そして、彼らは、この碑文を、西暦7世紀の最後の10年の間に起きた大規模な火災によって生じた、明瞭な炭化層を有するウィツナル近くの湖で見つかった古環境的な証拠と結び付けた。ウィツナル全域にわたって主要なモニュメントが広範に破壊・焼失したという考古学的証拠も、この結び付きを支持するものである。堆積物の分析からは、この火災事象後に土地利用の急激な減少が生じたことが明らかになり、攻撃が、ウィツナルの人々に深刻な悪影響を及ぼしたことが示唆された。
今回の知見は、極端な暴力的な争いは古典期末期に限定的なものであって環境ストレスや限られた資源をめぐる競争の高まりの結果として生じたものである、という従来の説に疑問を投げ掛けるものだと、Wahlたちは述べている。
doi:10.1038/s41562-019-0671-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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