【気候科学】熱帯が二酸化炭素排出源だったという意外な結果
Nature Communications
2019年8月14日
温室効果ガスの一種である二酸化炭素(CO2)の北アフリカの熱帯地域からの排出量は、これまで考えられていたよりもはるかに多いことが、人工衛星観測による研究で明らかになった。この研究で、熱帯地域全体が正味のCO2排出源だとする予想外の結果になった。この研究について報告する論文が、今週掲載される。
熱帯の陸上生態系では、植物と土壌に大量の炭素が貯留している。この炭素の運命(生物圏への炭素の貯留が続くのか、CO2として大気中に放出されるのか)を予測することは、熱帯全体の観測結果が少ないために困難だった。
今回、Paul Palmerたちの研究グループは、複数の人工衛星観測の結果を用いて、2009~2017年の熱帯地域でのCO2排出量の季節的傾向をマッピングした。アジア、オーストラリア、南米の各熱帯地域は、CO2を吸収・貯留するCO2吸収源であるが、アフリカの熱帯地域からは年間約1兆2500億キログラムの炭素が排出されており、これまでの推定値を大きく上回っている。Palmerたちは、持続的な土地劣化を原因とする土壌からのCO2放出が、この観測結果に重要な役割を果たした可能性があると考えている。
以上の結果は、これまで知られていなかったCO2排出量の多い地域を特定し、パリ協定のような気候変動緩和策をどのように見直す必要があるのかを浮き彫りにしている。こうした緩和策は、天然のCO2吸収源が引き続き機能して、目標を達成することに大きく依存している。しかし、熱帯地域のCO2排出量の急増という予想外の結果は、こうした目標を達成するための努力が人為起源の変化によって妨げられる可能性のあることを浮き彫りにしている。
doi:10.1038/s41467-019-11097-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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