【社会学】平等は協力の必須条件でないかもしれない
Nature
2019年8月15日
中程度の富の不平等は、グループ内での協力を生み出す可能性があることが、理論モデルと行動実験の分析によって示唆された。極端な不平等は協力を妨げるが、もし社会的生産性に個人差があるのであれば、協力を優勢にするためには行為者が受け取る金額に多少の不平等を生じさせることが必要な場合があるというのだ。この研究結果を報告する論文が、今週掲載される。
社会的ジレンマの状況においては、全体の福祉は、全ての個人が協力すれば最大となり、これは個人が繰り返し交流する場合にそうなりやすい。この直接互恵性のコンセプトのモデルの大部分は、協力する意思の有無以外の点で、参加者に差がないことを前提としている。しかし、実生活では、どれだけの資源を受け取れるのか、どれだけ効率的に社会財を生産できるかなどの点で個人差がある。
今回、Martin Nowakたちの研究グループは、こうしたモデルに修正を加えて、個人間の不平等のさまざまな原因(例えば、参加者が最初にいくらの金銭を所有しているか、参加者が他者のためにどれほどの利益を生み出せるか、参加者が公共財からどれだけの利益を得られるか)を考慮に入れたモデルを設計した。その結果、極端な不平等があれば協力は妨げられるが、もし参加者の生産性に個人差があり、生産性の高い参加者の方が多額の金銭を得られるようにすれば、協力が生まれることが見いだされた。この研究知見は、人間が参加したオンライン行動実験(2人で行うゲーム)によって裏付けられた。
Nowakたちは、協力を最大化するためには、異なるタイプの富の不平等の間の微妙なバランスを取ること、例えば、社会財の生産性の高い者が多額の金銭を得られるようにすることが必要だと結論している。
doi:10.1038/s41586-019-1488-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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