【進化】ホラアナグマの絶滅にヒトが重要な役割を果たしていたかもしれない
Scientific Reports
2019年8月16日
最終氷期の末期にヨーロッパのホラアナグマが絶滅した際に、ヒトが大きな役割を果たしていた可能性のあることを示した論文が、今週掲載される。この研究知見は、ホラアナグマの個体数が約4万年前に激減し始めたことを示唆しているが、これは、気候の寒冷化よりも前のことであり、ヨーロッパで解剖学的現生人類の地理的分布が拡大した時期と一致している。
今回、Verena Schuenemann、Herve Bocherensたちの研究グループは、スイス、ポーランド、フランス、スペイン、ドイツ、イタリア、セルビアの14地点で採取した骨試料からホラアナグマのミトコンドリアゲノム(59件)を再構築し、以前に発表されたミトコンドリアゲノム(64件)と比較することで、更新世後期におけるそれぞれのホラアナグマ個体群の生息地と移動経路を示した。
今回の研究で特定された5つの主要なミトコンドリアDNA系統は、約45万1000年前の共通祖先を起源としてヨーロッパ全土に分散したが、これは、ホラアナグマの分布が以前考えられていたよりも複雑なことを示唆している。Schuenemannたちは、ホラアナグマの個体数が約4万年前まで比較的安定していたと推定しているが、その間には2つの寒冷期があり、複数の寒冷現象が発生している。最終氷期の寒冷気候が始まったのは、かなり後(約3万年前)のことであったため、この研究知見は、ヒトによる狩猟などの他の要因が大きな影響を及ぼした可能性を示唆している。
気候の寒冷化とそれによって植物由来食物が入手しにくくなったことで、ホラアナグマの個体群全体が、気候が穏やかで、さまざまな植物を大量に入手できる小規模な生息地に生息する亜個体群に分裂した可能性がある。ヒトは、これらの亜個体群間の連結性を遮断することによって、ホラアナグマの絶滅に決定的な役割を果たしたのかもしれない。
doi:10.1038/s41598-019-47073-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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