Research Press Release
Rasを不活性化する
Nature Chemical Biology
2011年7月18日
Rasタンパク質は、細胞が持つ多くの増殖促進経路の中心的な構成要素であり、がんなどの疾患で過剰に活性化されている場合がある。その活性化とシグナル伝達に干渉するペプチド阻害剤が、Nature Chemical Biology(電子版)で発表される。Ras依存性のシグナル伝達を不活性化または阻害する方法を得るのは困難であることが知られているが、そのような方法があれば、多くの疾患の治療に有用と考えられる。
Rasの活性は、Sosとのタンパク質間相互作用に依存している。Sosは、Rasを不活性化状態から活性化状態に変化させる。Sosは、αへリックスと呼ばれる構造モチーフを介してRasと相互作用することが知られている。タンパク質間相互作用を遮断する方法として、タンパク質の表面にαへリックスの人工的な模倣構造を加える方法が出現した。
P Arora、D Bar-SagiたちがSosのαへリックスを利用して作製したペプチド阻害剤は、SosによるRasの活性化に干渉し、細胞のRas依存性シグナル伝達を遮断した。この研究は、へリックスの模倣がタンパク質間相互作用界面を標的化するのに有効な方法であるという概念を支持するものであり、各種の疾患を治療するためのRas阻害剤開発に根拠を与えると考えられる。
doi:10.1038/nchembio.612
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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