医学研究:感覚フィードバックによって改善される義足使用
Nature Medicine
2019年9月10日
感覚フィードバックシグナルを復活させる新型の義足が歩行動作を改善させ、幻肢痛を減少させることが、2人の患者についての症例研究で明らかになった。
神経系と外部の装置との直接的相互作用を可能にする神経補綴システム〔ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)としても知られる〕は、脳や脊髄に損傷を持つ患者、変性疾患の患者や足を失った患者の生活の質(QOL)を改善できる。この分野は相当に進歩してきているものの、BMIが実用化に至るのを妨げている大きな問題の1つが、補綴装置からの「感覚」フィードバックがないことである。感覚フィードバックは、運動指令の微調整を助け、外界との相互作用を回復するのに必須といえる。
S Raspopovicたちは、足が地面に触れる感覚、足裏が感じる圧力や膝関節の角度などを示す外部センサーを多数備えた改良型の義足装置について報告している。これらのセンサーが、脛骨神経に埋め込まれた一群の刺激電極を介して感覚シグナルを伝達し、神経系へと戻す。下肢を切断した2人の患者では、この義足を用いることで歩行動作が改善し、実験室でも実際の環境でも、耐久力が高まることが分かった。その上、この装具を使用すると、患者の幻肢痛が減少した。
この症例研究によって得られた結果は原理証明といえるものであり、人工装置に感覚フィードバックを取り入れることが実際の環境でも有望なことを示している。しかし、今後の研究はより大きな集団でもっと長期間にわたって行い、効果を追跡することが必要だろう。
doi:10.1038/s41591-019-0567-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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