【健康】マイクロバイオームの破壊との関連が認められる分娩様式
Nature
2019年9月19日
帝王切開によって生まれた新生児は、異なった腸内微生物相を持つ傾向があり、病気を引き起こす可能性のある細菌が定着しやすいことを報告する論文が、今週掲載される。今回の研究は、この種の研究として最大規模のもので、その結果により、分娩様式が生後数週間の腸内微生物相を形作る主たる要因であることを示唆する先行研究の知見が確認された。
新生児は、母親と周囲の環境から微生物を獲得し、それが腸内微生物相を形成する。この過程が破壊されることは、小児期やその後の人生における一部の疾患の発症に関連すると考えられてきた。生後数か月(新生児期)の乳児の腸内微生物相の組成に何が影響を及ぼすのかを解明しようとする試みがなされてきたが、サンプルサイズが小さく、微生物相の分解能が低いために制約を受けていた。
今回、Trevor Lawleyたちの研究グループは、英国の病院で生まれた満期産児(596例)の腸内微生物相の全ゲノム塩基配列解読を行い、帝王切開による出産によって新生児期の微生物相の組成がどのように形成されるのかを調べた。調査した乳児のうち、314例が経腟分娩で、282例が帝王切開による分娩だった。分析の結果、帝王切開による出産は、母体の共生細菌の伝播が阻害されることと環境的起源を持つ可能性の高い薬剤耐性日和見病原体の定着が多いことと関連することが明らかになった。帝王切開によって生まれた乳児の約83%が疾患発症の原因となる可能性がある細菌を持っていたのに対し、経腟分娩で生まれた乳児の場合は約49%だった。また、経腟分娩児の腸微生物相の組成の変動の最大の原因は、母親の抗生物質使用だった。
Lawleyたちは、腸内微生物相の破壊と出生直後の病原体の存在が臨床的にどのような結果をもたらすかについては解明できていないと結論付けている。
doi:10.1038/s41586-019-1560-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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