【考古学】先史時代の哺乳瓶か
Nature
2019年9月26日
ドイツのバイエルン地方にある青銅器時代と鉄器時代の乳児の墓で発見された注ぎ口の付いた小型の土器が、乳児や幼児に動物の乳を飲ませるために使用されていた可能性が非常に高いことが明らかになった。これらの人工遺物の分析は、有史以前のヒト集団における離乳のやり方に関する手掛かりをもたらしている。分析結果を報告する論文が、今週掲載される。
液体を注ぐことのできる口の付いた土器の容器は、5000年以上前の新石器時代のものが発見されている。こうした容器は、乳児の授乳に用いられていたという考えが示されているが、実際に何を入れていたのかを突き止めるのは困難だった。その理由の1つは、注ぎ口の開口部が小さいことにある。この課題を克服するため、今回の研究で、Julie Dunne、Richard Evershedたちのグループは、バイエルン地方で発見された口の開いた椀状の容器(3個)を調べた。そのうちの2個は、紀元前800~450年のものと年代決定された鉄器時代初期の墓地から出土し、残りの1個は、紀元前1200~800年のものと年代決定された後期青銅器時代の大きな共同墓地から出土した。これらの容器は、0~6歳の子どもたちの遺骸のそばで発見された。
Evershedたちは、容器の脂質残留物の分析を行い、動物性食品(生乳を含む)由来の脂肪酸を同定した。2個の容器は、反芻動物の乳を入れるために使用されたと考えられ、1個の容器には、反芻動物以外の乳(ブタの乳や母乳の可能性あり)が混ざった残留物が見つかった。以上の新知見は、これらの容器が、離乳期に動物の乳を補助食品として乳児に与えるために使用された可能性を示す証拠となるとEvershedたちは考えている。
doi:10.1038/s41586-019-1572-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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