Research Press Release
移植用の臓器を冷却保存
Nature Metabolism
2019年10月1日
動物やヒトから提供された心臓の急速冷却は、移植後の組織を損傷する化学物質の蓄積を低減しているかもしれないことを示した論文が掲載される。世界的に提供される臓器の数が限られている中、今回の知見はそうした保存溶液の改良につながる可能性がある。
移植医療では、一般に、提供者の心臓を低温の溶液中で保存している。しかし、提供された心臓を蘇生させる間に起こる化学的変化や、低温保存の利点については、正確には分かっていない。
今回、Mike Murphy、Kourosh Saeb-Parsyたちは、マウス、ブタ、ヒトの心臓について、温かい状態、あるいは低温で保存し、詳細な代謝解析を行った。すると、心臓を提供後に温かいままに保つと、代謝産物であるコハク酸の蓄積量が増え、このコハク酸は心臓に血管を再びつないだ後に、心臓の組織を損傷させることが分かった。コハク酸の蓄積を薬剤投与や心臓の冷却によって防ぐと、マウスの心臓移植後の経過は改善した。
著者たちは、この研究が臓器でのコハク酸の生成を防ぐ新薬の開発につながり、臓器移植の成績がよくなるかもしれないと結論している。
doi:10.1038/s42255-019-0115-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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