【公衆衛生】北京における「稽留流産」の妊娠と大気汚染の関連
Nature Sustainability
2019年10月15日
北京で2009~2017年に行われた25万人を超える妊婦の調査の結果、大気汚染への母親の曝露と、妊娠第1三半期の稽留流産のリスクの増大が関連していることが示された。この知見について報告する論文が掲載される。
劣悪な大気環境は、疾病負荷の主な原因である。これまでの研究では、母親の大気汚染への曝露が、出生時低体重、早産、妊娠性高血圧、妊娠高血圧腎症(子癇前症)などの有害な出生転帰のリスクの増大に寄与していて、妊娠中の母親の健康、さらには生涯にわたる女性の健康にも影響を及ぼす可能性があることが一貫して示されている。しかし、大気汚染への曝露と稽留流産がどのように関連しているかについては、ほとんど分かっていない。稽留流産は「静かな流産」とも呼ばれ、胎児が形成されていない、あるいは死亡しているが、胎盤と胎児組織は母親の子宮に残っている場合のことである。
今回L Zhangたちは、中国・北京の25万5668人の妊婦のカルテを分析し、それぞれの妊婦の住居や職場に最も近い大気測定所の測定結果に基づいて、大気汚染物質への曝露レベルを算出した。この研究で検討された大気汚染物質には、直径2.5マイクロメートル未満の粒子状物質、二酸化硫黄、オゾン、一酸化炭素が含まれる。著者たちは妊婦について、受胎時の年齢、職業、気温でグループ分けをした。参加した妊婦の中で、1万7497人(6.8%)が稽留流産を経験しており、著者たちは、全てのグループにおいて、より高い濃度の汚染物質への曝露が、妊娠第1三半期の稽留流産のリスクの高さと関連することを見いだした。
大気汚染が胎児に影響を及ぼす特定の機構を解明するには、さらなる研究が必要である。
doi:10.1038/s41893-019-0387-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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