【健康科学】乳幼児の死亡に関する世界地図が示す地理的格差
Nature
2019年10月17日
低所得国と中所得国の5歳未満児の死亡率に関する詳細な世界地図が作製され、2000年から2017年までの死者数が1億2300万人と推定されていることを報告する論文が、今週掲載される。今回の研究は、小児が5歳に満たずに死亡するリスクについて、出生地による格差がどの程度あるのかを調べた。こうした格差の原因を調べることは、全世界の予防可能な小児の死亡をなくすことを目的とした政策や公衆衛生プログラムへの有益な情報提供に資する可能性がある。
小児の死亡は、全世界で減少しており、1950年に1960万人だった死亡数が、2017年には540万人となり、2017年の小児の死亡の93%は、中低所得国で起こっている。国連の持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット3.2は、予防可能な小児の死亡を2030年までになくすと定めている。この目標を達成する上でかなりの進展があったが、地方行政区分レベルでは、依然として死亡率にばらつきがある。
予防可能な小児の死亡をなくすという目標の達成に近づくには、小児の死亡率と傾向を十分に解明する必要がある。この必要性に応えるため、Simon Hayたちの研究グループは、2000年から2017年までのアフリカ、アジア、中東、北米・中南米、オセアニアの99の中低所得国の5歳未満児の死亡に関する高分解能マップを作製した。Hayたちは、国レベルで、調査対象国の小児死亡率が2000年から2017年までに41%減少したことを示している。2017年の小児の死亡数が最も多かったのはインド、ナイジェリア、パキスタン、コンゴ民主共和国だが、それぞれの国内で死亡数の分布に偏りがあった。Hayたちは、地理的格差がなければ、これらの国々で2000年から2017年までに起こった小児の死亡の約3分の2を防ぐことができたと推定している。さらに、研究対象地域でSDGs ターゲット3.2の目標値である少なくとも1000人当たり25人という死亡率を達成していれば、2017年には推定260万人の5歳未満児の死亡を回避できた可能性があるとHayたちは報告している。
同時掲載のWorld Viewでは、国連人権高等弁務官のMichelle Bachelet(前チリ大統領)が、小児の死亡を減らすには、病気の子どもが確実に医者に診てもらえるようにすることよりも広範な努力が必要だと主張している。Bacheletは、「死亡に寄与する要因とは、結局、病気よりも広範な困難である貧困、無力化、差別、不正の解消に失敗していることなのである。今週号に掲載されるデータのような確かなデータに対しては、政府と社会のあらゆる分野で対策を講じられなければならない」と指摘している。
doi:10.1038/s41586-019-1545-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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