【古生物学】整然と並んでいた4億8000万年前の節足動物
Scientific Reports
2019年10月18日
古代の節足動物の複数の化石が直線状に整列した状態で発見され、これは、集団行動を示しており、環境からの合図に応答したもの、あるいは繁殖のための季節的移動の一環とする見解を示した論文が、今週掲載される。今回の研究で得られた知見からは、現生動物と同じような集団行動が早ければ4億8000万年前から存在していたことが示唆されている。
集団的な社会的行動は、数百万年にわたる自然選択によって進化してきたことが知られており、数々の実例が現生節足動物によって示されている。例えば、鎖のようにつながった状態で移動するチョウやガの幼虫、アリやイセエビだ。しかし、集団行動の起源と初期の歴史は、ほとんど知られていない。
今回のJean Vannierたちの論文には、モロッコのオルドビス紀前期(約4億8000万年前)の三葉虫(節足動物)の一種であるAmpyx priscusの化石が直線状に集まった状態が数例見つかったことが記述されている。A. priscusは、体長が16~22ミリメートルで、胴体の前面に頑丈な棘があり、胴体の後方に向かって一対の非常に長い棘があった。Vannierたちが調べたA. priscusの化石の集合体のそれぞれで、個々のA. priscusが、胴体の前面を同じ方向を向けて一列に並び、棘を介して他の個体との接触を維持していた。Vannierたちは、今回観察された化石のパターンのスケールを考慮すると、このように一貫した直線性と方向性の原因が、受動的運搬や水流による堆積であった可能性は低く、A. priscusが移動中に突然死んだ可能性の方が高いと考えている。例えば、嵐に遭遇し、堆積物中に生き埋めになったというのだ。
Vannierたちは、A. priscusが海底を伝って移動していたことから、集団移動を行い、長く伸びた棘を使って身体的接触を行い、一列での移動を維持した可能性が非常に高いという考えを示している。嵐によってA. priscusの環境が撹乱されると、それが運動センサーと触覚センサーによって感知され、それに対するストレス応答として、A. priscusがもっと静かな深い海域への集団移動に駆り立てられたと考えられる。同様の行動は、現代のイセエビにも見られる。これに対して、今回観察された化石のパターンの原因は、性的に成熟した個体が産卵場に移動する季節的な繁殖行動であった可能性もある。A. priscusが盲目であることから、Vannierたちは、三葉虫が棘と化学物質を介した感覚刺激を用いて協調していた可能性があるという仮説を提示している。
今回の発見は、4億8000万年前の節足動物がその神経の複雑さを利用して一時的な集団行動を発達させた可能性を明らかにしている。
doi:10.1038/s41598-019-51012-3
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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