【心理学】医師の信念が患者の感じる痛みに影響する
Nature Human Behaviour
2019年10月22日
医療提供者が治療の有効性を信じていてその信念が顔の表情に表れる場合、患者の感じる痛みが小さくなる可能性があることを示唆する論文が掲載される。この知見は、医療従事者の患者への対応の訓練法に影響を与えるかもしれない。
今回、Luke Changの研究チームは3つの実験を行って、医療従事者の役を与えられた被験者の信念が、患者役の被験者の疼痛応答にどのように影響するかについて調べた。実験では、194人の参加者が「医師」または「患者」の役に振り分けられ、個々の医師役に患者役の腕にクリームを塗る。医師役の被験者には、2つのクリームのうち痛みの軽減に有効なのは一方のみであり、もう一方のクリームはプラセボだと信じさせた(実際には両方のクリームともプラセボである)。実験の結果、医師役の被験者が、自分が有効だと信じているクリームを患者役の被験者に塗った場合、患者が訴える痛みのレベルは低く、表情に表れる痛みの反応も弱く、皮膚のarousal responseも有意に異なっていた。また、研究チームは、医師役の顔の表情が、患者に塗るクリームによって異なることを見いだした。これは、今回認められた効果の機構である可能性を示唆している。
今回の知見は、医療従事者の患者への接し方が、患者の治療転帰に潜在的に重要性であることを浮き彫りにしている。研究チームは、この分野の今後の研究では、今回得られた結果を高める可能性のある他の状況的な手掛かりについて調べるよう提案している。
doi:10.1038/s41562-019-0749-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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