IPCCのSRREN報告書をめぐる利益相反の疑い
Nature Climate Change
2011年7月18日
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の再生可能エネルギー源と気候変動緩和に関する特別報告書(SRREN)がこの6月に発表されたが、データの評価を行ったパネルにおいて利益相反があったため、同報告書に内容の偏りがあるという主張にさらされている。Nature Climate Change(電子版)に掲載される2編のOpinion論文は、この問題を論じ、IPCCにおける評価の透明性と公正性を担保する新たな政策の実施について考察している。
英国を本拠として活動する気候変動問題評論家で作家のM Lynasは、環境保護団体グリーンピースの活動家S Teskeが、(グリーンピースの報告書を含む)各種データを評価して、それをSRRENに反映させるかどうかを決めるパネルのメンバーだったため、「彼が、この報告書の内容に不公正な影響を与えた可能性があるようにみえる」と述べている。そのうえで、Lynasは、この内容的な偏りという問題によって、SRRENの信用性が損なわれると主張する。
これに対して、SRRENを作成したIPCC第3作業部会のO Edenhofer共同議長は、Teskeが参加したことは、第3部会が評価対象とするテーマに関して科学的に信頼性の高い見解を幅広く集めるうえで役立った、と述べている。また、Edenhoferは、IPCCの専門家が「それぞれの分野の第一線の専門家として関係雑誌に論文を投稿しており」、報告書の作成過程で大量の文献を検討する際には、「その一部として自分自身の論文を検討することも多い」と指摘する。それは、利益相反には当たらない、とEdenhoferは断じている。
doi:10.1038/nclimate1177
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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