【健康】マウスの高塩分摂取が認知機能低下に結び付いている
Nature
2019年10月24日
マウスの塩分摂取と認知機能との間に因果関係が認められたことを報告する論文が、今週、掲載される。今回の研究では、マウスに極端な高塩分食を与えると、変異型タウ(アルツハイマー病などの認知症の原因となる病態に関連するタンパク質)が蓄積することが明らかになった。ただし、この結果をヒトに応用できるかどうかは、今後の研究で調べる必要がある。
塩分の過剰摂取は、認知機能障害と関連付けられており、認知症のリスク因子である。この関連性の基盤となる正確な機序は解明されていないが、血管機能不全とニューロンにおけるタウタンパク質の凝集は、認知機能障害の発生に関わっていると考えられている。今回、Costantino Iadecolaたちの研究グループは、タウの凝集が認知機能障害の発生に関わっていることを示す証拠を発見し、リン酸化タウの濃度を最終的に上昇させるシグナル伝達カスケードを突き止めた。
通常の食餌の塩分の8~16倍という高塩分の食餌を与えたマウスは、新しい対象物をうまく認識できず、迷路試験の成績もよくなかった。Iadecolaたちは、高塩分摂取によって一酸化窒素の合成が低下し、その結果としてタウのリン酸化にかかわる酵素(CDK5)が活性化されることを明らかにした。一酸化窒素の合成を元に戻すと、マウスの認知機能障害は回復した。なお、Iadecolaたちは注意すべき点として、今回の研究でマウスに与えた高塩分の食餌は、ヒトについて報告されている塩分摂取量の最高値を超えて、ヒトの推奨摂取量である1日4~5グラムの3~5倍に達していたことを挙げている。しかし、今回の研究結果は、食習慣と認知機能の健康を結び付ける未知の経路を明らかにしており、この経路の存在は、高塩分食を避けることで認知機能を維持できる可能性のあることを示している。
doi:10.1038/s41586-019-1688-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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