【神経科学】マウスの記憶学習を変化させる微生物
Nature
2019年10月24日
このほど行われたマウスの研究で、腸内微生物相の破壊が学習行動にどのような影響を及ぼすのかが詳しく解明された。その結果について報告する論文が掲載される。腸内微生物相の変化と宿主の行動の変化が関連していることが先行研究で示唆されていたが、その背後にある駆動力が何なのかは分かっていない。今回の研究では、恐怖反応に関連するニューロンの機能と構造を調節する微生物由来のシグナルが見つかった。
今回、David Artisたちの研究グループは、マウスの微生物相の操作が恐怖消去学習にどのような影響を及ぼすのかを調べた。消去学習とは、手掛かり刺激と関連付けられた出来事を変化させた時に生じるプロセスであり、それに応じて行動が変化する。今回の研究で、Artisたちは、マウスを訓練して、特定の雑音とフットショック(脚に電気ショックを与えること)を関連付けさせた。これによって恐怖反応が生じ、この雑音を聞いたマウスは、すくみ行動を示した。次に、この雑音を聞かせて電気ショックを与えるという処置を止めると、対照マウスによる条件付けされたすくみ行動は程度が弱まったが、無菌マウスまたは抗生物質を投与したマウス(つまり、微生物相が枯渇したマウス)は、恐怖反応を示し続けた。
微生物相の枯渇は、神経細胞における遺伝子発現の変化とニューロン構造の学習関連変化の異常と関連していたことをArtisたちは報告している。また、Artisたちは、無菌マウスにおいて発現量が減少した4種類の微生物由来化合物を突き止めた。これらの化合物は、先行研究で神経精神疾患との関連が指摘されている。総合すると、これらの知見は、マウスの行動とニューロンの活動に微生物相(と関連する代謝産物)が関わっていることを示している。
doi:10.1038/s41586-019-1644-y
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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