【進化学】鳥の卵の色はなぜ多様なのか
Nature Ecology & Evolution
2019年10月29日
生息地の気候が寒冷で巣が開放的な鳥は、濃い色の卵を産む傾向があることを明らかにした論文が掲載される。色の濃い色素によって、日光にさらされた卵は内部の温度を維持できる時間が長くなるのではないか、とその研究は示唆している。
鳥の卵の色と模様はさまざまであるが、こうした多様性の主たる要因は分かっていない。例えば、濃い色素は薄い色素よりも多くの熱を吸収するため、色の濃い卵殻は寒冷な地域で有利と考えられるが、有害な紫外線放射も遮断する。紫外線は温暖な地域の方が強い。同様に、濃い色素は抗菌特性がより強いため、温暖湿潤な地域で有利と考えられる。薄い色素は捕食者の目につきやすいが、捕食者は暑い地域の方に多い傾向がある。
Daniel Hanley、Phillip Wisockiたちは、自然史博物館のコレクションに由来する634種の卵の明度と色合いを測定することにより、卵殻の色の全般的パターンを調べた。そのパターンをそれぞれの種の地理的繁殖地域にマッピングすると、気温と日射が共に低く、(穴の中やカップ状の巣ではなく)巣が地上で開放的に作られる場合に、卵の色が著しく濃くなることが明らかになった。
次に、色合いと明度がさまざまな卵(ニワトリ、アヒル、ウズラの卵)を日射に曝露した。その結果、色の薄い卵よりも色の濃い卵の方が、孵卵温度を長時間維持できることが明らかになった。以上の知見を総合すると、温度調節が卵殻色決定の主たる要因となっている可能性が強く示唆される。
doi:10.1038/s41559-019-1003-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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