【神経変性】ハンチントン病に関連する変異型タンパク質のクリアランス
Nature
2019年10月31日
ハンチントン病に関わる変異型タンパク質のレベルを下げる化合物が同定されたことを報告する論文が、今週掲載される。これは、原理証明研究の成果であり、この方法を臨床応用するには、さらなる研究が必要になっている。
ハンチントン病は、現在のところ治療法が存在しない。この病気の原因は、ハンチンチンというタンパク質をコードする遺伝子の変異であり、そのために変異型タンパク質がニューロンに蓄積し、最終的にはニューロンを死滅させる。ハンチントン病の病因タンパク質のレベルを下げることは、魅力的な治療戦略だが、健全な(野生型)ハンチンチンは、脳内で重要な機能を果たすため、この治療戦略は特異性の高いことが必要となる。
今回、Boxun Luたちの研究グループは、(野生型ではなく)変異型のタンパク質と結合し、細胞のオートファジーを介したタンパク質分解機構の重要な構成要素とも結合する低分子化合物を同定して、変異型ハンチンチンのクリアランスを行う新しい方法を提案している。そして、Luたちは、これらの化合物が、マウスとヒトの培養神経細胞における変異型ハンチンチンのレベルを下げるが、正常なハンチンチンのレベルは変化しないことを明らかにした。この化合物をマウスモデルに投与したところ、細胞の神経変性が抑制され、運動機能も改善した。
Luたちは、この治療法がハンチントン病に有効であることが証明されれば、この治療戦略を変異型タンパク質の蓄積が関係している他の疾患にも拡張適用できる可能性があるという見解を示している。同時掲載のNews & Viewsでは、Huda Zoghbiが「長期治療の過程で有効性が持続的でロバストなことを確認するために長期的な前臨床試験が必要となる」と指摘している。
doi:10.1038/s41586-019-1722-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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