【進化学】二足歩行を始める前の類人猿
Nature
2019年11月7日
ドイツで発見された新種の化石類人猿について報告する論文が、今週掲載される。この化石標本は、約1160万年前の中新世に生息していた類人猿のものとされ、二足歩行する前の類人猿の姿に関する手掛かりとなっている。
ヒト族の二足歩行と大型類人猿の懸垂の起源を説明する多くの学説が提示されてきたが、化石証拠がなかった。ヒト族の二足歩行については、足の裏全体を地面につけて歩行する現生サルに似た四足動物から進化したという考え方がある一方で、懸垂運動を頻繁に行う現生チンパンジーに最もよく似た四足動物から進化したという考え方も示されている。
今回、Madelaine Bohmeたちは、完全な四肢骨が保存された新種の化石類人猿Danuvius guggenmosiについて記述している。この化石標本については、「extended limb clambering(四肢を伸ばした姿勢でのよじ登り)」と命名された新たな位置的行動の形態を示す証拠になるとBohmeたちは考えている。D. guggenmosiは、腕で枝にぶら下がることができたと考えられているが、脚より腕を多く使って移動する他の類人猿(例えば、テナガザルやオランウータン)とは異なり、後肢が真っすぐに保たれており、歩行に用いられた可能性がある。また、D. guggenmosiは、物をつかむことのできる第1趾を持っており、足の裏全体を地面につけて歩行していたと考えられる。
Bohmeたちは、類人猿が地上に降りる前に後肢で歩行し始めた過程がD. guggenmosiの化石によって例証されていると結論付けている。
doi:10.1038/s41586-019-1731-0
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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